令和3年3月から稼働するオンライン資格確認システム(以下、オン資)について確認してみたい。
7月に支払基金から資料が送付されて来たのでどのようなシステムなのか分からない方々も多いと思うが、オン資とは文字通りオンラインで保険証の資格確認が出来るシステムである。
患者がマイナンバーカードを認証端末にかざすことで、保険の資格の有無が瞬時に確認出来るのだ。従来の保険証を用いて確認することも可能なので安心して欲しい。
それだけでなく、資格喪失後受診の場合は、自動的に保険者間での振替をしてくれる、夢のようなシステムだ。(返戻がゼロになるわけでは無いが、極めて少なくなる)
なお資格確認と特定健診情報の確認は令和3年3月から、確認資格過誤対応、薬剤情報確認の対応は令和3年10月からとなっている。
制度スタート時点では主保険のみ(船員・自衛官・日雇いは対象外)で公費(乳幼児・ひとり親・障害)については対応していないが、生活保護は令和5年度中に対応予定である。
次にオン資によくある誤解を解いてみたい。まず「個人情報を扱うのが怖い」「マイナンバーカードを預かるなんてできない」という声をよく聴くが、マイナンバーカードを用いて端末を操作するのは患者なので、医療機関が預かる必要はない。また、医療機関は保険証情報等(患者の同意が必要)以外の機微な情報は取得出来ない仕組みになっている。
2点目に、「導入は義務なのか?」という声もよく耳にするが、導入は任意であるので、各医療機関でメリット・デメリットを踏まえて検討すれば良い。
3点目としては、マイナンバーカードを持っているだけでは保険証の代わりにならない、という事だろう。患者がマイナンバーカードを取得したら、マイナポータルから保険情報との紐付けを行って初めて保険証として機能する仕組みだからだ。前述のとおり生活保護や各種公費は未対応なので、従来通り目視での確認が必要となっている。
運用面での注意点を確認しよう。オン資には窓口に最低2台の端末を置くことになるので、それなりのスペースが必要だ。また、認証するためには7秒程度の時間が掛かるので、その時間を踏まえた窓口対応を今のうちから検討しておきたい。
令和2年8月1日時点でのマイナンバーカード取得率は18.2%だが、令和3年が明けると、患者もマイナンバーカードを使ってみたいという方も増えると思われるので、窓口で質問が増える事が予想される。またシステム運用開始以降には、端末の操作方法だけでなく、マイナンバーカードそのものの質問などが増える事も想定されるので、受付スタッフもそれなりの知識が求められるだろう。
前述したマイナポータルで行う保険情報との紐付けは医療機関の窓口でも出来るようになっているので、その対応も必要になる可能性がある。
ここまでオン資の概要を見てきたが、実際のところメリット・デメリットはどうだろうか?まずはメリットについて考えてみたい。
○事務的メリット
・資格喪失による返戻が無くなる(令和3年10月から)
・照会番号を登録することでより分かり易くなる
・新患登録が簡単になる(多くのメーカーが対応予定)
・予約患者については一括照会が可能
○診療上のメリット
・投薬情報の確認が確実に行える(レセプト情報なのでタイムラグあり)
・特定健診の情報が分かるので診療に役立てられる
・災害時に服用履歴が追える
※患者の同意や保険者の対応が必要
○患者のメリット
・限度額認定証などを持ち歩く必要がない
・医療費控除の申請がラクになる
・患者自身の情報を医療機関や薬局で共有してもらえる(マイナポータルから患者自身も確認できる)
○経営的なメリット
・導入に際して補助金がある(詳細はレセコン/電子カルテのベンダーに確認を)
オンライン資格確認システムで分かること
機能 | 利用者 | 使用するデータ | 検討内容 |
---|---|---|---|
レセプトの電子資格確認 | - | 医療機関・薬局から請求された電子レセプト |
1、喪失後の資格で請求された場合の新保険者への振替 2、月の途中での喪失により新旧保険者に跨る場合の分割 |
保険者等が中間サーバーに登録した資格情報 | |||
医療費情報の閲覧 | 患者 | 医療機関・薬局から請求された電子レセプト及び紙レセプトの点数、一部負担金額等 |
1、マイナポータルにより医療費通知を閲覧(患者本人のみ) 2、e-Taxへのアップロードによる医療費控除の手続き |
薬剤情報の閲覧 | 患者、医師等 | 医療機関・薬局から請求された電子レセプト及び紙レセプトの点数、一部負担金額等 |
1、マイナポータルにより患者自身が閲覧 2、医師等が閲覧(患者の同意必要) |
特定健診情報の閲覧 | 患者、医師等 | 保険者が登録した特定健診データ |
公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会
神奈川県副支部長 細谷 邦夫