医療の広告は身体、生命に関わる重要な情報であり、医師と患者との間における情報量の非対称のゆえに厳しく規制が掛けられています。
医療法第六条の五において、何人も虚偽広告をしてはならないと定められており、医師から依頼された第三者も対象となると厳しく規定されています。
長く続いた強い広告規制に大きな変化が二度起こりました。
その第一は平成19年施行の改正医療法「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」です。
患者さんが自分の症状に合った適切な医療機関を選択出来るように、必要な情報が正確に伝わる事を目指した改正です。
それ迄は不可とされていた写真、映像、音声等による表現も可能となり、広告可能表現が大幅に広がりました。
同時に告示等で具体的に広告出来る内容が例示され、広告可能な範囲が広がりました。
医療機関検索を容易にする意向から、各都道府県が主体となり、医療機関検索を可能とする「医療機能情報提供制度」の導入が義務付けられ、全都道府県で医療機関検索サイトが立ち上がりました。
東京都では「ひまわり」という検索サイトで最寄りの医療機関探しを診療科、疾患臓器等からの検索が可能となっています。
次に平成29年の医療法改正においては、ウェブサイトを広告としない方針を転換して広告となる事となり、限定的に認められた事項以外は、原則として
広告が禁止されることになりました。
医療広告について厚生労働省から具体的な指針等が続けて出されています。
平成30年5月
「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」・・・・・・・医療広告ガイドライン
平成30年8月
「医療広告ガイドラインに関するQ&A」
令和3年7月
「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」
そして今年の2月に「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」第2版が出されました。
はじめにに書かれているのは<限定解除要件>についてです。
この限定解除要件はウェブサイト広告を行う上では、とても重要な項目となります。
<限定解除要件>とは
ウェブサイトも医療広告の為、掲載出来る情報は限定されますが、
限定解除要件を満たすことで多くの情報掲載が可能となります。
<限定解除要件>は、4つの要件を全て満たすことが必要となりますが、
保険診療を行う医療機関においては、4つの要件の内2つを満たすことが必要となります。
(1) ウェブサイトの広告であること・・・・駅看板等は対象となりません。
(2) 掲載されている情報の内容について、患者さん等の問い合わせが容易に出来るような方法を明示すること・・・メールアドレス等を記載する
「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」第2版に書かれている広告が禁止される事例をみてみると、
a) 治療内容の虚偽として
どんなに難しい手術でも成功させる・絶対安全な治療です
b) データーの根拠を明確にしていない調査結果として
医療脱毛患者様満足度99%、
c) 医療広告ガイドラインを遵守している広告であると言う内容
ガイドライン等を遵守するのは当然の事なので、敢えて強調することは誇大広告となります。
d) 比較優良広告として禁止される
当院は美容外科手術において日本一の実績を有します。
e) 著名人との関係性強調
サッカー選手の〇〇選手は患者第1号になって頂いた。
著名人が患者であることは、比較優良広告となり広告出来ません。
f) 提供する医療の内容等について誤認させる広告
全身脱毛3年間し放題は、実態に即しない虚偽広告となります。
g) 科学的根拠に乏しい情報による誘導
ストレスを感じている方には癌のリスクがあります。
このような広告も虚偽広告に該当することとなります。
h) 患者さんの治療に関する体験談
特定の医療機関に患者さんを誘引する意図、誘因性の有無が判断基準となります。
例えば、医療機関が患者さんや家族に(有償・無償を問わず)
肯定的な体験談の投稿を依頼した場合は、当該体験談には誘因性が
認められ、治療の内容または効果に関する体験談を掲載することは
出来ないとなります。
公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会 顧問
株式会社MMS 代表取締役 佐久間 賢一