2019年4月から労働基準法が改正され、年次有給休暇の取得促進のために年10日以上の年次有給休暇が付与される職員に対して、年5日については、取得日を指定して取得させることが義務付けられました。この義務を時季指定義務といいます。

対象者は、正職員に限らずパートタイマーを含めて、2019年4月1日以降年次有給休暇が10日以上付与された者が対象となります。期間は、10日以上付与された日を起算日として1年間です。医療機関が、指定したにもかかわらず本人が取得を拒否した場合であっても法違反の責任は医療機関にあるため、年休5日は休憩と同じと考えてください。6時間を超えて勤務する場合、45分以上の休憩を本人が拒否することはできないことと同様に会社が時季指定した日は年休を取得してもらわなければなりません。
なお、付与日数には前年度の繰り越しは含まれません
当年付与される日数10日以上 → 時季指定義務対象
当年付与される日数6日、前年度繰越5日 → 時季指定義務対象外

パートタイマー比例付与
週所定労働日数年間所定労働日数勤 務 年 数
6ヶ月1年6ヶ月2年6ヶ月3年6ヶ月4年6ヶ月5年6ヶ月6年6ヶ月
4日169~216日7日8日9日10日12日13日15日
3日121~168日5日6日6日8日9日10日11日
2日73~120日3日4日4日5日6日6日7日
1日48~72日1日2日2日2日3日3日3日

有給休暇の取得方法
次の年次有給休暇の取得方法①~③の組み合わせで年5日以上取得させます。
労働者が取得時季を指定する(自発的に年休を取得)
計画的付与の労使協定により取得時季を指定する
付与日数のうち5日を超える日数を対象として労使協定により年休の取得時季をあらかじめ定めることができる制度です。
医療機関が取得時季を指定する
取得時期を指定するためには、職員10名以上の医療機関では、就業規則に時季制定の対象となる職員の範囲、時季指定の方法を規定してください。
規定例:年次有給休暇が10日以上与えられた職員に対し、付与日から1年以内に当該職員の有する年次有給休暇のうち5日について、医院が職員の意見を聴取し、その意見を尊重した上で、あらかじめ時季を指定して取得させる。ただし、自発的取得および計画的付与により年次有給休暇を取得した場合においては、当該取得した日数分を5日から控除するものとする。

時季指定のイメージ

例1 自発的に5日以上取得している実績がある場合
 自発的に5日以上取得しているのであれば、医療機関が時季指定をする必要はありません。職場習慣として5日以上取得しているのであれば、特別な対応は必要ありません。念のため年間5日以上取得しなければならない旨を周知し、これまで通り各自に任せて取得してもらってください。

例2 全員5日未満の場合
 これまでの取得状況が年5日未満の場合、取得促進を働き掛ける必要があります。学会等の都合により臨時休診になる日があらかじめ決まっている場合には、計画的付与や時季指定により、取得日を定めて取得させていくことが考えられます。また、四半期ごとに取得状況を確認し、状況に応じて取得を促す方法や各人別に取得月を定めて取得を促すことが考えられます。
11か月間ほったらかしにして最後の月に慌てて5連休を与えて職場が混乱しないよう管理してください。

職員退職時の注意事項
 職員が1年間の途中で退職する場合でも5日取得させる必要があります。残っている年次有給休暇を全て消化して退職することが多いため、実務上問題になることは少ないと思いますが、退職時には最低5日は取得してから退職させるよう配慮が必要です。

行政の指導・監督
 5日の時季指定義務に違反した場合、職員1名につき30万円以下の罰金と定められています。労働基準監督署の調査では、年次有給休暇を「付与した日」「取得した日」「取得した日数」を記録した管理簿の確認が行われます。未取得者についていきなり罰金という乱暴な取扱いはあり得ないことですが、是正を強く求められ運営に支障が生じる恐れも考えられることから、適切な取得に配慮する必要があります。

社労士法人ユアサイド
社会保険労務士
中宮伸二郎
投稿日 2023.02.22

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