次期診療報酬改定に向けての役所同士の鞘当てが加熱し、診療所を中心にマイナス改定か?との危機感が大きくなっていると思われる。 
そのようななか、12月11日に「改定の基本方針」が、12月20日に「改定率」が発表され、一定の方向性が定まったので本稿ではそれらについて確認してみたい。

○診療報酬本体の改定は6月施行へ

 かなり大きな変更点でありながら、まだご存じない方々も多いのが改定の施行時期である。令和6年の診療報酬改定から図1の通り、薬価改定は4月1日、診療報酬は6月1日施行となった。
  医療機関にとっては電子カルテ/レセコンのマスタ更新さえしっかりと行えば問題はない事だが、患者の目線に立ってみると窓口での支払額が変わるタイミングが立て続けに来ることになる。
  これは院内処方か院外処方かによっても対応が変わってくるが、後述する「薬剤自己負担の導入」とあわせ、年明け早々には患者への周知活動を始めておきたい。
図1【出典】医療DXについて(その2)令和5年8月2日 中央社会保険医療協議会総会
 

 

○ 今後の改定スケジュール

 1月下旬になると改定に向けた具体的な情報が出てくる。前回までの改定の流れをもとにすると、下記のようなスケジュールで進んでいくと思われるので、今後の情報に注意したい。
12月11日:基本方針発表
12月20日:改定率発表
1月19日:中医協公聴会
1月26日?:改定の個別項目(短冊) 
2月7日or14日?:中医協答申
3月1日or 5日?:官報告示
3月29日?:疑義解釈の発出
4月 1日:新薬価運用開始
6月 1日:新点数運用開始
8月以降:新点数による審査結果の反映
10月1日以降:経過措置のある項目について運用開始
       長期収載品の一部負担制度運用開始
       レセプトオンライン請求への完全移行(返戻を含む)
12月 2日:紙保険証新規発行停止(紙保険証からマイナ保険証への移行)

○診療報酬改定でのコロナ特例について

 2020年1月末から4年近く続いたコロナ禍であるが、診療報酬上の特例的な手当は、令和6年3月末で一区切りとなる(図2)
 診療所では外来感染対策向上加算、病院では感染対策向上加算の算定要件に組み込まれていくことが考えられる。
図2【出典】令和5年9月15日厚生労働省公表資料


○改定率について

 報道等でご存知かと思うが、診療報酬本体はプラスとなった。病院・診療所の違いや診療科、患者像によって影響は大きく異なるので、今後の具体的な改定内容を元に、5月末までに自院への影響をシミュレーションする必要がある。
  0.88%のプラスにはなったが手放しには喜べないだろう。スタッフの処遇改善分が0.61%とされているため、単純な引き算では測れないが、プラス改定分は差し引き0.27%となるためだ。
◆診療報酬全体 ▲0.12%
◆診療報酬本体 +0.88%(国費800億円程度)
・各科改定率 医科 +0.52%
歯科 +0.57%
調剤 +0.16%

◆薬価等   ▲1.00%(国費▲1,200億円程度)
・薬価 ▲0.97%(国費▲1,200億円程度) ※令和6年4月施行
・材料価格 ▲0.02%(国費▲20億円程度) ※令和6年6月施行

◆介護報酬
◆改定率 +1.59%
・介護職員の処遇改善分 +0.98%(令和6年6月施行)
・その他の改定率 +0.61%

○医療制度改革について

 改定率と同時に、薬剤自己負担の導入(令和6年10月より施行)が公表された。調基収載品について選定療養の仕組みを導入し、先発医薬品と後発医薬品の差額について患者に自己負担を求めるというものであるが、20年ほど前にあった「薬剤一部負担金」のような仕組みと考えれば分かりやすいだろう。
 具体的には「後発医薬品の上市後5年以上経過したもの又は後発医薬品の置換率が 50%以上となったものを対象に、後発医薬品の最高価格帯との価格差の4分の3までを保険給付の対象」という仕組みであるが、詳細は今後出てくる予定である。
 中央社会保険医療協議会で示された改定の基本方針についてポイントを確認してみたい。
図3 令和6年度診療報酬改定の基本方針の概要
出典:令和6年12月13日 中央社会保険医療協議会総会
 まずは「改定に当たっての基本認識」では大きな方向性を示しており、改定率の資料でも示された処遇改善に関することや同時改定による連携の重要性、医療DXについて触れられている。

 次に「改定の基本的視点と具体的方向性」について、大きく4項目が示されているので、それぞれ医科関連で気になる項目を確認してみよう。

◆改定の基本的視点と具体的方向性

(1)現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進【重点課題】
 DXやITを活用した働き方改革が求められる。手段と目的を履き違えないように注意が必要。
 一部の点数ではITの活用により成果が出れば、専従要件等の緩和の話も出ている。
(2)ポスト2025を見据えた地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進

 団塊の世代が後期高齢者となる2025年を目前とした同時改定であるため、地域包括ケアシステムを踏まえた自院の立ち位置を踏まえた地域連携を再確認したい。また連携は病病連携、病診連携、診診連携のみではなく、医介薬歯での連携を意識する必要がある。
 紹介受診重点医療機関を中心とした機能分化や連携の強化も課題となり、「かかりつけ」という言葉の意図するところをしっかりと確認しておきたい。
 在宅医療では訪問看護ステーションの役割が大きくなることが考えられるので、自院で訪問看護ステーションを持つ医療機関、訪問看護ステーションと連携した在宅医療を実施している医療機関ともに、動向を注視したい。
(3)安心・安全で質の高い医療の推進
 入院時の食事については30円/食アップということで決着済みであるので、早めの患者への周知が必要となる。
 口腔・栄養・リハビリテーションは今次改定のキーワードであるので、自院でのアウトカムについて早めに把握しておきたい。また、在宅医療でもキーワードとなるため、歯科との連携や管理栄養士等の活用も視野に入れたい。
 医薬品の供給不足は未だ先が見通せない状況でもあるので、院内処方が中心であっても近隣の調剤薬局との情報共有ができる関係を築いておきたい。
(4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上
 後発医薬品(ジェネリック)については目標値を達成したので、次はバイオ後続品(バイオシミラー)に目標値が設定されることになった。これに合わせて加算の新設も期待されている。
 医薬品の適正使用については、いわゆるフォーミュラリを念頭に置いておくことも必要だろう。
公益社団法人日本医業経営コンサルタント協会
            神奈川県支部 副会長

有限会社メディカル・サポート・システムズ
代表取締役
細谷 邦夫
投稿日 2024.01.24

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